JBS 中級コース(案1)/Day2 オリエンテーション/2026-05-21

Day2 事前準備

Day2・Day3 は、新しいリポジトリを Day1 と同様の手法で Fork して進めます。本書は事前セットアップの手順に加え、上流工程×AI のいま、設計書を読む観点、参照すべき情報源、一般的な基準までまとめた一冊です。生成待ちの時間に読めば、検証の質が上がります。

Section 01

はじめに

Day2 は Day1 の設計書を実装に落とす日です。全部を実装しきる日ではありません。1 本を深く実装し、生成物を自分で検証して判定できる状態をめざします。

Day1 の成果物

ファイル内容
docs/requirements.md要件定義書。MoSCoW 分類、SLA 定義、状態遷移規則、要確認事項の解消経緯
docs/data_model.mdER 図、状態遷移図、カラム定義、インデックス方針
docs/openapi.yamlAPI 仕様、エラーコード一覧、認可仕様
docs/sequence_diagrams.md起票・状態遷移・SLA 違反の3シーケンス図、層責務の分担表

Day2 でめざす状態

Section 02

上流工程×AI の現在地

この研修の検証サイクルが、なぜ「いまのトレンドの本流」なのかを先に共有します。

上流工程の変化を表す概念図。左は人が要件・設計・実装・テストを直列で進める従来型、右は AI エージェントが全工程を協調し人は検証の位置に立つ AI 駆動型
左:従来=人が工程を直列で進める / 右:AI 駆動=エージェントが全工程を協調し、人は検証・判定の位置に立つ

いま起きている変化

Day2 の検証サイクル(設計書を正に AI 生成物を照合して判定)は、この「仕様駆動 × Agentic SDLC」の本流です。速く作ることより、出力を設計に照らして判定できる力が、いま市場で評価されます。出典は末尾の参照一覧に記載しています。

Section 03

事前セットアップ

Day2・Day3 は、第1回とは別の新しいリポジトリで進めます。受講者全員が Day1 完成版の設計書から再開します。git コマンドの入力や、ファイルの上書きはありません。第1回のリポジトリは別リポジトリとしてそのまま残ります。

手順(Fork とクローン

完了すると、Day1 完成版の設計書(docs/ 配下)が入った自分用リポジトリが手元に用意できます。

うまくいかないときの確認

状況確認すること
リポジトリの URL が分からない事務局または講師に確認してください
「Fork」ボタンが見つからないリポジトリ画面の右上、Star ボタンの近くにあります
Fork できたか分からない画面左上のリポジトリ名が「自分のアカウント名/…」になっていれば成功です
VSCode への取り込み方が分からないDay1 の事前セットアップと同じ手順です
Claude に相談する

表で解決しないときは、この資料の PDF を Claude Code に添付し、次のように送信してください。今の状況に合わせた操作を案内します。

Claude へのメッセージ例Day2 の事前セットアップでつまずきました。添付資料の手順を実行中です。 今やろうとしている操作:(例: Fork したリポジトリの VSCode への取り込み) 画面の状態:(表示されている内容やメッセージをそのまま書く) どう操作すればよいか教えてください。
解決しない場合

Claude の案内でも解決しない場合は、無理に進めず、その旨を控えておいてください。Day2 開講直後の冒頭セッションで、講師が画面を共有しながら一緒に対応します。事前に完了していなくても受講には支障ありません。

当日の流れ

Section 04

アンケートへの回答

Day1 でいただいた声に対して、Day2 で何を変えたかを共有します。

Day1 でいただいた声Day2 での対応
生成物が多く、検証しきれない1 ブロックごとに題材専用チェックリストで判定する「検証サイクル」を導入。生成量も削減
出力の妥当性を確認できず、説明責任が持てない生成前に正解条件と設計書の根拠を言語化。Session 07 で説明ドリル
進行が速く、理解が追いつかない全エンドポイント実装をやめ、1 本を深く。残りはレビュー主体に変更
トークンを想定以上に消費した3 層を 1 プロンプトでまとめず、1 ファイル単位で依頼。Session 07 で実測を振り返り
用語が多く、Claude に不慣れ用語が初出する箇所に最小 Tips を挿入。本書末尾にも用語の早見表
ターミナル操作に迷ったDay2・Day3 は Fork 方式に変更し、git コマンド入力をなくした
Section 05

Day2 の進め方:検証サイクル

「プロンプトを打つ → 出力を Apply する → 次へ」は繰り返しません。1 ブロックごとに次の 4 ステップを回します。

STEP 1
言語化
生成前に「何を満たせば正解か」を1〜2行書く。設計書のどこが根拠かを指す。
STEP 2
生成
範囲を絞って Claude に作らせる。1プロンプトで3層をまとめない。
STEP 3
検証
題材専用チェックリストで生成物を1項目ずつ確認する。
STEP 4
判定
受け入れか差し戻しかを自分で決める。差し戻すなら理由を1行書く。
Tips:このサイクルの狙い

「レビューしきれない」は、見る観点が言語化されていない状態です。STEP 1 で正解条件を書けば STEP 3 で見る箇所が決まります。「説明責任が持てない」は、根拠の出どころを追っていない状態です。STEP 1 で設計書のどこ由来かを指せば、根拠を示せます。

Section 06

設計書を読む観点

生成物を判定するには、設計書を「どの観点で読むか」が決まっている必要があります。本研修で使う 5 観点です。

レビュー5観点のマップ。中心の検証対象から、要件トレーサビリティ・データモデル整合・API設計・層責務・テスト境界値の5方向に観点が広がる放射図
中心=検証対象、5 方向=レビューの観点

非機能要件は思いつきでなく ISO/IEC 25010 のシステム/ソフトウェア品質特性(機能適合性・性能効率性・互換性・使用性・信頼性・セキュリティ・保守性・移植性)の枠で抜けを確認すると、観点の漏れが減ります。

Section 07

参照すべき情報源(優先順位)

判定に迷ったとき、どの情報を「正」とするか。優先順位を固定しておくとぶれません。

優先情報源使いどころ
1docs/ の設計書この題材の正。要件・データ・API・シーケンスはここを最優先
2CLAUDE.md技術スタック、ディレクトリ構成、3層の依存方向、禁止事項
3公式ドキュメントClaude Code / FastAPI / SQLAlchemy / pytest の正しい書き方
4標準仕様OpenAPI 仕様、REST の一般原則、ISO/IEC 25010 の品質特性
本編と補足で値が食い違うとき

ヒアリング本編と補足・制約書で値が違う箇所があります(レスポンス「3 秒」対「1 秒」など)。後出しの確定値(補足・architecture_constraints.md)が正で、解消経緯は requirements.md 第8節にあります。気づけたら Day1 で扱った「情報源の突き合わせ」の成果です。

Section 08

一般的な基準と Day2 の前提

SLA だけでなく、判定に使う一般的な基準をまとめます。生成待ちにここを確認しておくと検証が速くなります。

SLA の要点

優先度初回応答解決
high30 分以内4 時間以内
medium4 時間以内1 営業日以内
low1 営業日以内3 営業日以内

営業時間は平日 9:00-19:00。営業時間外と土日祝は経過時間に数えません。全優先度で同じ閾値なら、公開デモと同じ誤実装です。

テスト・CI の一般基準

状態遷移の要点

Section 09

Claude Code とモデルの最新

研修で使うツールの現在地です(2026 年 5 月時点。出典は末尾)。

研修への含意

モデルとツールは「コードを書く」から「開発を進めるエージェント基盤」へ重心が移っています。だからこそ、出力を設計に照らして判定し説明できる人の役割が、相対的に重くなります。Day2・Day3 はその訓練です。

Section 10

Tips と注意

Tips

Tips:トークン節約

3 層を 1 プロンプトで生成させると、Claude が app/ 全体を読み直して差分が長くなり、読み返せないまま消費が増えます。範囲を 1 ファイルに絞ると、読む量・出る量・修正回数が減ります。

Tips:レビューの型

生成前に「正解条件」を 1 行書くと、レビューで見る箇所が決まります。観点を先に言語化していないと、出力に引きずられて「それらしいので OK」と流してしまいます。

Tips:説明責任の持ち方

「AI が出したから正しい」ではなく「要件に照らして自分が判定したから正しい」と言える状態をめざします。根拠を docs/ のどこに書いてあるかで示せれば、上司にも説明できます。

注意

公開デモは「直すべき題材」

Day1 で観察した公開デモは、title 未検証・状態遷移無検証・SLA 一律1時間という改善余地を意図的に含んでいます。Claude が同じ誤りをしないか、検証で確かめます。

Apply して次へ、を繰り返すと検証できる量を超えます。1 ブロックごとに STEP 3・STEP 4 を必ず通してください。Day2・Day3 は Fork 方式のため、git コマンドやファイル上書きの操作はありません。

Section 11

用語早見表

手が止まったとき、待ち時間に目を通しておくと迷いが減ります。

用語これだけ押さえる
Swagger UI実装した API をブラウザから手で叩く画面(/docs)。Try it out → 入力 → Execute で結果を確認
SLA対応の時間目標。優先度ごとに初回応答・解決の時間が決まり、超過を違反として検出
ruffコードの書式・規約チェッカー。CI で自動実行、違反で赤
mypy型の整合性チェッカー。CI で自動実行、違反で赤
uvicornFastAPI アプリを起動するサーバー。uvicorn app.main:app --reload
pytestテスト実行ツール。pytest tests/ -q
Agentic SDLCAI が複数の開発工程をまたいで仕事を進める考え方。人は検証・判定を担う
3層router=HTTP受け口、service=業務ロジック、repository=DB操作。依存は router→service→repository の一方向
Section 12

参照・出典と、持ち帰る視点

設計書・指示書

場所何を見るか
docs/requirements.md要件、SLA 定義、状態遷移規則、要確認の解消経緯(第8節)
docs/data_model.mdカラム・型・PK/FK・index
docs/openapi.yamlエンドポイント、スキーマ、エラーコード
docs/sequence_diagrams.md3 ユースケースの流れ、層責務
docs/architecture_constraints.md非機能要件(レスポンス、可用性、保持期間、イメージサイズ)
CLAUDE.md技術スタック、構成、3層の依存方向、禁止事項

公式ドキュメント・最新動向の出典

持ち帰る3点

Day2 の到達点

1 本の API を設計書から実装し、生成コードを設計書と照合し、実装の根拠を説明できる状態。残りの実装は Claude に任せ、レビューに回ります。この力が、いまの上流工程で最も問われています。